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COLUMN

「座りすぎ」研究の第一人者
早稲田大学スポーツ科学学術院 岡浩一朗教授に
お話を伺いました

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「座りすぎ」は腰痛や肩こり、精神疾患など、心身の健康への悪影響が指摘されています。座りすぎによって溜まった体への影響は、「休日などの余暇時間に少し体を動かしたくらいでは解消しきれない可能性がある」ようです。
そこで「座りすぎ」研究の第一人者である早稲田大学スポーツ科学学術院の岡浩一朗教授にいろいろ教えて頂きました。

岡 浩一朗 教授

早稲田大学 スポーツ科学学術院 スポーツ科学部

岡 浩一朗 教授

1970年生まれ。早稲田大学大学院人間科学研究科修了。博士(人間科学)。早稲田大学スポーツ科学部助手、日本学術振興会特別研究員PD、東京都老人総合研究所(現東京都健康長寿医療センター研究所)介護予防緊急対策室主任を経て、2006年に早稲田大学スポーツ科学学術院准教授として着任。
2012年より現職。健康行動科学や行動疫学を研究分野とし、特に座りすぎによる健康リスクに関する研究の第一人者。著書には『「座りすぎ」が寿命を縮める』『長生きしたければ座りすぎをやめなさい』などがある。

座りすぎている日本人

世界20ヶ国における1日の総座位時間を比較した結果、日本は最も座位時間が長いことが分かりました。

世界20ケ国の平日の座位時間

世界20ケ国の平日の座位時間

厚生労働省「座位行動」より

日本人は1日8時間以上座っている人が男性38%、女性33%もいます。

日本人成人における平日1日の総座位時間の割合

日本人成人における平日1日の総座位時間の割合日本人成人における平日1日の総座位時間の割合

厚生労働省「平成25年国民健康・栄養調査」より作図/
健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023より

別の調査では、日本のデスクワーカーは勤務日の6割以上を座位時間に当てているとされています。

勤務日の座位時間の割合

勤務日の座位時間の割合

Kurita et al.:BMJ Open 24;9(2)(2019)を元に岡教授にて作図

昔は上司にハンコをもらいに行ったり、ファックスを送りに行ったり、勤務時間内に身体を動かすタイミングが沢山ありました。パソコンの普及によって全ての業務が机の上で完結するようになり業務効率は飛躍的に改善しました。一方で、座位時間はさらに長くなる傾向にあります。

座位時間と死亡リスクの関連について調べた研究では、1日の座位時間が8時間以上になると死亡リスクが急上昇することが分かっています。

座位時間と死亡リスクの関連

座位時間と死亡リスクの関連

健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023より

運動しても座りすぎの解消にはならない?

最近は勤務後や休日に筋トレなどで体を動かす人も少なくありません。「余暇時間に十分体を動かしているし、勤務時間に座位時間が多くても問題ないのでは?」と思う方も多いはず。しかし、岡教授は「座りすぎの影響は少しくらい体を動かしただけでは解消しきれない可能性がある」と指摘します。

※写真はイメージです

実は、座りすぎによって犠牲になっているのは、いわゆる『運動』と言われる中強度の運動ではなく、低強度の身体活動です。立って会話をしたり、コピーを取りに歩いたりなど、従前の労働・生活にはあった低強度の身体活動が便利な技術・機器に置き換わってしまっているのです。

昇降デスク活用で肩こり・腰痛対策に

岡教授の研究室では昇降デスクを使用して座りすぎを解消しているそう。「昇降デスクは、簡単に座った状態から立つ姿勢にワークスタイルを変更できます。導入以降、腰痛や肩こりが解消されたため、中には一日中立って研究している人も」と岡教授は昇降デスク活用のメリットについて語ります。

mtg

※写真はイメージです

職場の生産性向上にも

「座りすぎ」は健康リスクだけではなく、仕事の生産性などにも影響を及ぼすことが指摘されています。就労中の座位行動と生産性やワーク・エンゲイジメントの関連を調べた結果、20~30歳代では座位時間の割合が多い人の方が、生産性が低い結果に。また40~50歳代でも座位時間の割合が多い人は、仕事への取り組み(ワーク・エンゲイジメント)が低い結果となりました。

就労中の座位行動と生産性やワークエンゲイジメントの関連

就労中の座位行動と生産性やワークエンゲイジメントの関連就労中の座位行動と生産性やワークエンゲイジメントの関連

20~59歳の就労者2,572名(平均年齢41.2歳)を分析対象。
Ishii et al.:J Occup Environ Med 60(4)(2018)を参考に岡教授が作図。

電動昇降デスクは、
健康リスクの低減のみならず、
オフィスワーカーの生産性向上にも
好影響を与える可能性があります。